Volunteacher:大学生講師のブログ

教育系ボランティアで教師をしている大学生のブログです。教育に関する話題や、趣味の話題がメインです。

道徳教育って必要なのか(教材編) その1

 プルガです。

 

 道徳教育に関して、ネット上で話題になっている「星野君の二塁打」という教材を見つけたので、それを踏まえてもう少し現状の道徳教育に関する不満を話したいと思います。


 その前にもう少し教材化に関する前提をお話ししたいと思います。教科化するにあたり、先生が「評価するもの」です。これに関しては「内面の変化」がヒントになるそうですが、まったくもって謎です。そもそも内面って絶対に変化しなければならないのでしょうか?


 以前の記事でも話した通り、道徳教育がなくとももとから思いやりがある生徒は存在します。そういう生徒が持ついい気質を崩すような形になっても「内面の変化」として評価されるのでしょうか?逆に言えば内面が変わらないということは評価の対象にならないのでしょうか?


 この評価基準は実に不確かなものです。あとは授業の発話なども評価されるようですが、これも基準が曖昧です。教師の裁量にかかっていると言ってもいいでしょう。しかし教師は道徳教育に関してプロではありません。むしろ素人です。そんな人たちに内面の変化をこのような曖昧な基準で評価されるというのは、怖いですね。


 また道徳の指導法としては、「答えありき」というスタイルは変わらないという意見もあるため、場合によっては「教師にとって都合のよい解答=内面の変化」とされる可能性もあります。そうなったら道徳という教科は単なる「答え当てゲーム」になってしまいますね。正直どんな形になるか、不安です。


 そして今回取り上げる教材も答えありきの指導ではよろしくない感じの教材なんですよね…。


・「星野君の二塁打」とは


 星野君の二塁打は新たな道徳の教科書の教材になっている話で、対象年齢は小学校6年生のようです。話の内容はだいたいこんな感じです。


 甲子園の選手権大会への出場がかかった試合で、9回裏同点でノーアウト、ランナー一塁。バッターは主人公の星野君のわけですが、彼は監督から「送りバントをしろ」という風に言われます。一方の星野君も一度は了承しますが、この日一度もヒットを打てていないという焦燥感からヒッティングに出てしまいます。しかし結果として、一塁の山本君の帰還による決勝点への起点となったとともに、二塁打を上げることに成功します。

 

 しかし翌日、監督は

 

「星野君は小さく言えば俺との約束を破り、大きく言えばチームの統制を乱した。犠牲の精神が分からないやつは社会に出てもうまくやっていけない。」

 

などと言い、

 

「罰として星野君を甲子園に出場禁止にする。仮にそれでチームが負けてもそれはしかたのないことだと思う。」

 

と、決勝点をあげた星野君を出場禁止にするのです。


だいたいこんな感じです。ネットの掲示板では「バントするべき」、「ヒッティングに出るべき」とかの意見が出ていますが、結構“野球の戦術”としての話がメインになってしまっているので、ここではあくまで道徳教育の話としてこの教材にコメントしていきたいと思います。


・星野君の行為はチームの統制を乱す行為か。


まず論点として、主人公の星野君の行為を持っていきます。星野君は監督とのやり取りで星野君は「はぁ」と曖昧な返事をしました。これとその後の心情描写を踏まえると、「本当は納得がいってないけど、とりあえずは了承した」と考えるのが妥当であると思われます。

 

 納得のいくことであろうとなかろうと、一度了解の意思表示をしてしまった以上、監督の提案に乗ったことになります。少なくとも監督、控えている大川君は「星野はバントをする」という認識が形成されます。しかし、問題はこの時の描写に出ていない山本君です。 私は、野球は専門ではないのですが、山本君も星野君が「送りバントをする」という認識だった、と考えるのが妥当であると思います。

 

 星野君は長距離打者です。ゴロ球よりはフライになりやすいと言えるでしょう。なので、山本君が出塁する気が高いということは、フライではなくゴロ球、要するにバントをすると認識している可能性が高いです。これでは山本君と星野君の間に連携が取れていないことになります。そうであれば確かに連携を崩したとは言えます(統制というところまで行くかは微妙ですが…。)


 では星野君はどうするべきだったか。監督だけではなく他のチームメイトも含めてしっかり話し合うべきだったのではないかと私は思います。監督はダメでもチームメイトは星野君にヒッティングを許可するかもしれません。監督はあくまでサポートなわけですから最後に決定権を持つのはプレイをするチームメンバーです。チームメイトの承諾は得ておくべきだったのではないかと思います。


統制というよりは、連携の問題ですね。統制も連携の一環ではありますから、強引ながら統制を乱したということはできる、のかもしれません…。


今回は長くなったのでここまでにします。次回は監督の評価、設問について言及したいと思います。