Volunteacher:大学生講師のブログ

教育系ボランティアで教師をしている大学生のブログです。教育に関する話題や、趣味の話題がメインです。

時事ネタ:合格を金で買うことについて

プルガです。

 

 またしても時事ネタなのですが、若者の努力を無駄にするという、教育界としてはかなり恐ろしい部類の事件ではないかと思い、記事にしました。東京医科大学での裏口入学」事件です。東京医大は新宿にあるのもあって私も大学の紹介状の下で行くこともあるのですが、旺文社のデータによると偏差値が67.5という他学部も含めて考えれば十分エリートに当たる大学です。


 今回の他とは違う問題点は同事件で逮捕された佐藤太容疑者が文部科学省の科学技術・学術政策局長というポストであるということを悪用している点です。同容疑者が、文部科学省が行っている私立大学支援事業について助言することの見返りとして、東京医大の理事長と学長が、受験した息子の点数をいじるように指示しており、結果として東京医大は支援の対象と認定され5年にわたり1億5000万円を受け取る予定だったとされます。つまるところ1億5000万円という税金を賄賂にした裏口入学なところが、ユニークな点です。


 もちろん今回は賄賂の財源が税金なので尚更問題なのですが、話しを変えて、仮に本人のポケットマネーだったと仮定します(つまり一般に言われている「裏口入学」ですね)。それでも単に「親がどのくらい大学に金を出したか」で合格水準が定まるからという理由で不公平な入試である言えるでしょうか。一見すれば頷きたくもなりますが、これに関しては「なんとも言えない」というのが私の考えです。なぜなら、大学にはそれぞれの「アドミッション・ポリシー」があるからです。


 つまるところ募集要項なわけですが、この募集要項の作成に関して大学は大きな裁量があります。例えばスポーツ推薦が典型例です。スポーツができるかどうかは大学の意義である「研究による真実探求」には全く関係がなくても認められていますよね。これは大学が「~という目的で必要である(研究目的でなくてもよい)」ということをきちんと明記し、それに応じた枠を設けているからです。


例えば、明治大学の「スポーツ特別入学試験」を見てみましょう。

『この特別入学試験制度は、高等学校において学業に精励するとともにスポーツ活動に積極的に参加して優秀な成績を収めた受験生を受入れ、更なる一層の体育会運動部全体の強化と、また、「個」を強くする大学の代表として、心身ともに優秀な人材を育成し、立派な社会人として送り出すことを目的としています。』
(https://www.meiji.ac.jp/shogaku/admission/special.htmlより引用)


 このような書き口ですが、要するに「運動できるやつを受からせて、スポーツを通じて「明治大学スゲー」ってアピールしたいから、合格させるし育成もするよ」ということです。ネームバリューの向上という立派な営利目的ですが、一般的にスポーツ推薦は認められているのです。


 ですから、親がお金を出したかどうかで合格が定まるという自体は一見すると不公平に見えますが、同じような論理で考えれば「大学が現在資金不足に陥っており、できるだけ多くの資金を獲得したいという」目的の下、「特定の額を大学に収めてくれれば別枠で受験させてあげるよ」という入試の要綱をきちんと明記すれば(世間からの批判は多いかもしれませんが)認められると考えることができます。


 しかし今回の件では、多額の金額を修めれば有利にするということを「一般入試」で行っています。一般入試という形を取っている以上、合格水準は当然学力で決められなければなりません。もちろん受験生も「特別な明記はないし学力を基準として採点してくれるだろう」という認識でいるはずです。にもかかわらず「大学側に支払ってくれた金が多いから」という理由で学力が届かない人間を引き上げるのは、一般受験を受けた受験生全員に対する裏切り行為です。もっと言えば先述の認識で受験料を払っているわけですから詐欺と言うこともできるのでは、と私は感じます。非常に卑劣な行為なのです。


 それにしても学術研究の到達点である「真実への探求」とは真逆の、合格基準に関して「嘘の捏造」を行っているというのは笑えませんね。「学力試験と銘打ってるのに金の前では土俵にすら立てない」ということを受験が終わった後に認識させてしまいますから、当事者である他の受験生からすればやるせない気持ちだと思います。合否に関わらず受験生の中でプライドを傷つけられたと感じる方もいると思われます。


『健全なる精神のもとで人類の福祉に貢献する医療人を、自主性を重んじて育成する。』
(http://www.tokyo-med.ac.jp/med/summary.htmlより引用)


 東京医科大学医学科の教育理念から持ってきたものですが、今回逮捕された容疑者だけでなく、大学幹部も当時者なのですから、合否に関する信用を失わせたことに対して「健全なる精神のもとで」責任を負うべきだと私は感じます。